講師 | 脳科学者 茂木 健一郎 氏 |
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日時 | 2018年3月9日(金)19:00~21:30 |
会場 | 野田川わーくぱる |
参加者 | 260名 |
この講座では脳科学者茂木健一郎氏をお招きして現代の社会や未来の可能性を考え、その中で個人個人がどのように生き抜いていくかを学びました。
講師の茂木健一郎氏
受講生で満員の会場
講座の最初に茂木氏は「一つ今日は皆さんに伝えたいことがあります。その事について色々とお話ししながら伝えたいと思います」と宣言し話がスタートしました。
茂木氏は理化学研究所で脳波を調べているが、脳波で脳みその状態がわかるわけでもなく、世にいう頭が良い、悪いといったことはそんな簡単にわかるようなものではない。と説明しました。
最近のTV番組では高学歴や偏差値を話題にした番組づくりが多い。しかし良い大学に入ることと頭が良いこととは繋がらないと語ります。
人間には個性が一人一人あり、長所と短所が全員にある。例えば茂木氏の場合長所は「切り替えが早い」と認識しているが短所は「落ち着きがない」と理解している。そう考えるとペーパーテストで良い点数をとれることが賢いわけではない。自分自身の長所でもあり短所にもなる個性に対して理解できているかどうかがポイントであると伝えました。
講師の様子
そして、「ヤンキーとオタク」という表現を使い社会や企業、組織に必要とされる要素を説明します。コミュニケーションの世界で生き、生命力の溢れる「ヤンキー(芸能人や営業マン等を事例に紹介)」、専門的な知識や作業に没頭することが得意でコミュニケーションはあまり得意ではない「オタク」と仮に表現するとしたらこの両者が一緒に活動することが重要。お互いが得意なことを活かし、苦手なところを補完しあえる関係性。これが個性であり、これをうまく組み合わせることによって多様性が生まれる。世界の有名大学として名高いハーバード大学が今一番大切にしている要素は多様性。どれだけ「オタク」が頑張ってすごいプログラミングを作ったとしても、それを広める人がいないと難しい。「オタク」の技術力と「ヤンキー」の心意気といったように両輪を一緒に動かすことで可能性が広がる。重要なことは自分の個性を見つめ、適材適所の考えを持つことが大事だと説きます。
講座の様子
次に見た目ではわからない人の魅力についても語りました。
男性社会では社会的ステータスが高いと美人をゲットできると思っている。しかし、見た目と魅力は一致しないことが多い。わかりやすい事例としてベートベンは耳が聞こえないことを隠すために普段はしかめ面をしていたこと。松任谷由実の曲の作り方、そして尾崎豊が名門の高校に通っていたことなどを紹介します。
人は偏差値でも、見た目でもわからない。人は欠点があっても、劣等感があっても、長所もある。落ち着きがないからこそ切り替えが早い。頑固だからこそやり続けることもできる。家柄がいい人や美人でさえ劣等感がある。平等に劣等感を持っている。自分自身の個性をまずは気づくこと。その為には他人を通して自らのことを知ることが良いと話しました。共感の鏡、すれ違いの鏡、そんな他人の鏡を通して自分を見ることで理解することができる。
また、与謝野町はイギリスの田舎町に比べれば人口規模的にも都会。そして現代はインターネットに直結している時代であり人工知能の時代に入った。人工知能の時代というのは将棋の藤井五段が人工知能に100連敗するという事実。この時代に大学の入試で計られる知能で人の力が図られるのがおかしい。偏差値の知能は今や人工知能で置き換えられる時代になった。だからこそ、今一番求められるのはアクティブラーニング(探求学習)。人工知能の時代でさえもまだ判明されていないことがたくさんある。蝶のさなぎがなぜ移動するのか?ジャコウネコのコーヒー豆がなぜ美味しいのか?あたりまえだと思っている普段の生活の中にも人工知能では解き明かせないことがまだある。それには都市部も地方も関係ない。「今いるここ」がステージであると語りました。
講座の様子
茂木氏は最後に、すでに与謝野町で最高の学びを得ることができる時代。人工知能はどこでも作れる。与謝野町でも作ればいい。今は戦国時代に近い、人々は昔の戦国武将のようにそれぞれの個性と可能性と未来を見極める必要がある。どこに住んでいるかはもう関係ない。自分ができる課題を考えること。自分自身へ無茶ぶりをすること。できないことをやる時にドーパミンが出ることがわかっていて、それが脳に良い効果をあたえることもわかっている。自分が絶対できないと思うことをやっていくのもひとつの方法。劣等感を持っているとチャレンジができなくなるので劣等感は持たないこと。全て個性。今は新しいことを挑戦するにはお金がかからない、みんなそれぞれ個性があるしみんな違っていていい。さあ、すぐにでも挑戦しよう!とエールを送りました。
その後、会場の質問に丁寧に答え、最後は大きな拍手に包まれ会場を後にしました。