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【よさのみらい大学講座レポート】あなたの「楽しい」はきっと誰かの役に立つ

最終更新2023年04月01日(土) 10時00分
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あなたの「楽しい」はきっと誰かの役に立つ
講師 パティシエ エス コヤマ オーナーシェフ 小山 進 氏
日時 2020年2月25日(火)19:00 〜 20:30
会場 野田川わーくぱる
参加者 112名
講師の小山進氏

講師の小山進氏

講師の小山氏は今回の講演にあたり、丹後を巡り様々な人と会って地域の印象を確認し登壇されました。小山氏は丹後地域には、物事を追求し深掘りするこだわりの人達がいると感じたそうです。そういった人を「フカボリスト(深掘り- ist)」と呼ばれました。地域活性で他府県から人を呼び込むには、そういうフカボリストが協力してセッションし、化学変化を起こして、世界に発表することが大事だと説明されました。「丹後に来て、フカボリストに会って、こういう人たちが繋がっている町は凄い」と思ったそうです。また、講演前に与謝野町長と会い「フカボリスト」の意味を理解してもらえたことに驚いたそうです。「余計な説明をしなくても、すぐに理解ができる人がトップにいる町というのは素晴らしい」と話されました。小山氏が住む三田市も、たくさんのフカボリストを見つけ出して地域活性を実現したいそうです。

小山氏は兵庫県三田市の1店舗だけで営業をされています。それには様々な理由があるそうです。例えば、今コロナウィルスが大きな問題になっています。しかし、こういった問題が起きたときには人は「自然」に向かう性質があると小山氏は考えます。不思議なことに、世の中が自然や健康に関して問題意識を持つと、店の­­売り上げがあがるそうです。三田市の店は青い空ときれいな空気を感じることができます。きっと、人が本来行きたい場所というのは、そういったところなのではないかと話されました。そこで、これからの時代は、店舗は自然や森の中にあったほうが良いのではないかと考えるそうです。森の中にいろんなテナントのお店が10店舗程集まる場所をつくりたいと構想されています。

フカボリたのしむ心
小山氏はお菓子の加工の際に不必要なものとして残ってしまう野菜のヘタや果物の皮、卵の殻、珈琲や紅茶の出がらし等を土に還し発酵させて、その土で育てた稲を食べた牛の乳をお菓子作りに使用しています。そういった循環を17年かけて実現されたそうです。小山氏にとってはチャレンジであり、実験の気持ちで挑戦されています。今回も、農家の方からもらった30匹のカブトムシの幼虫をその土に埋めて育ててみようと思われているそうです。小山氏は、日常の中で面白いことを見つけて、それを楽しむことをライフワークとされています。

小学校低学年時代に培われた感覚

小学校低学年時代に培われた感覚

小山氏は、京都の出身で小学校2年生まで五条で過ごしました。五条の路地や碁盤の目の地域性を活かし、抑制された空間の中で色々な遊びを考え出したそうです。面白いことを考えつくと母親や近所の人たちに伝える。そんな生活だったので、伝えることに慣れていったと話されました。

また、お母さんの実家である兵庫県多可町加美で過ごした時間にもフカボリストが形成されたそうです。カブトムシやクワガタムシが大好きだったので、昆虫がどこの木に居て、どう分布しているか、どういった習性を持っているか等、自然の中で知った情報と、母親に買ってもらった図鑑とを照らし合わせて、ひとつひとつチェックしていたそうです。昆虫探しから形成された「深掘り」する姿勢は、今のお菓子づくりにも通じているそうです。

会場の様子

会場の様子

お菓子づくりの中で卵を使うシーンは多くありますが、「良い卵=物語のある卵」だそうです。世の中には色々な良い卵があるが、幼い頃に祖父が毎朝出してくれた産みたての卵(播州地鶏の卵)が、小山氏にとっては思い出深い卵であり、17年前からその卵でバウムクーヘンを焼いているそうです。また、ショコラやロールケーキを作る時には、子どもの時に母親が作ってくれた料理や味の体験が影響しているそうです。昭和時代や昔の良き感覚を進化させて次の時代で使っていきたいという思いがあるので、子どもの時の思い出などから作品を作ることが多いそうです。

そして、新製品をつくる時は周囲を驚かせたいと思いながら臨むそうです。それは子供時代に感じていた感覚と近いと説明されました。今思い起こすと、深堀し、『自分クオリティ』が形成されたのは、小学校低学年くらいだったそうです。

ケーキ屋になろうと決めたのは、高校2年生の時­­­­

ケーキ屋になろうと決めたのは、高校2年生の時­­­­

母親には幼い頃からケーキ屋になることに猛反対を受けていましたが、高校2年生の時、ケーキ職人の父親が勤めるお店でアルバイトをしたことがきっかけでケーキ職人になることを決めたそうです。小山氏はクリスマスに向けてケーキ作りを進める中で、職場のルールに関して父親から生まれて初めて激しく怒られる体験をしました。小山氏の父は幼い時に父を亡くし、その結果、父親像がわからず小山氏に対してどのように指導していいのか悩んでいたそうです。そういった、父の本音の部分や弱さを見た時に、自分がケーキ屋になって、父親に自信を持ってもらいたいといった「正義感」を感じてしまったそうです。小山氏はその時、ケーキ屋がどんな仕事なのかもよくわからないまま「絶対ケーキ屋になる!」と決めました。父を喜ばせたい思いの中で決心した小山氏は、「その後何があってもへこたれる理由が見当たらなかった」と言います。決めた後は目の前のことを一所懸命やるしかないと考えていました。

「想像を超えてやる」自分クオリティ

「想像を超えてやる」自分クオリティ

小山氏は下積み時代に、小さなことにも目標をおいて徹底的に臨みました。例えば、普通は洗いものばかりやっていると腐ってしまうところを、「洗いもん選手権」と自分で勝手に妄想しながら臨み、先輩を驚かせる出来を目指していたそうです。着ぐるみ営業では、他の人が選ばない面倒なキャラクターを自分が請け負って、むしろ集客をあげ、頑張れば頑張るほど影響力が高まり自分の居場所ができることを楽しんでいたそうです。

そんな日々の中で、転機を迎えたのは、「自分じゃなくてもできる」単純なトーストセットの提供を担当した時でした。単純なトーストセットの提供が嫌でしかたなかった小山氏は、密かに練習をし、トーストに乗せるバターをバラの花の形にして提供しました。その結果、お客様から高い評価を獲得し、それがたまたま社長の目にとまりました。社長が才能を理解し期待し、周囲も応援してくれるようになったことで才能が高まっていきます。しかし、一方で入社一年目にして頭角を表した小山氏には、敵も多くなりました。そういった環境の中で、社長から「全面的にバックアップをする。足を引っ張る人は社内だけでなく、これからもたくさん出現するので、まずは〝圧倒的になる″ことを目指しなさい」と言われました。そこから小山氏は努力をし、多くの信頼を勝ちとっていきます。社長の言葉には随分救われたそうです。「この人についていけばいつか周囲から認められるようになるかもしれない」と思い無我夢中で働きました。営業回りや、パッケージデザインの勉強など、ケーキづくり以外の仕事も一所懸命取り組みました。「人は期待されてないと思うと良い仕事ができないと思います。だから、必ず相手のことを褒めてください。」と小山氏は言います。褒められると、期待されていると感じるようになり、期待に応えようと動き始める。そこが大切な分かれ目だと考えているそうです。

やりたかったことがつながっている!
小山氏はケーキ屋さん以外にもなりたかった職業がありました。(ケーキ屋さんは、なりたい順位でいくと下位のほうだった。)

(その1)グラフィックデザイナー
(その2)ロックミュージシャン・・・いまだに年に3回くらいライブをやっている。
(その3)歯医者さん・・・シリコンゴムを練って人の口の型をとりたかった。
(その4)学校の先生・・・人前で教えること、発表することが好き。自分が一所懸命になって、人が変わっていって良くなるのを見るのが好き。
(その5)陶芸家・・・粘土細工が非常に好き

なりたかった職業全てをお菓子の周りに配備して、楽しく仕事を続けているような気がすると小山氏は言います。

(1)グラフィックデザインは、作ったお菓子に対してどんな衣装を着せるか、どんなフォントを使うかイメージを持って、ケーキを作りながらパッケージまで考えています。
(2)ロックミュージックは、チョコなど必ず創作するお菓子にはテーマの曲があり、ロックミュージシャンの友達が作ってくれたり、音楽のコンセプトを聞いたりしていると、自分がロックミュージシャンになったような気分になれるそうです。
(3)シリコンゴムでの型とりは、チョコの型とりで実現、チョコづくりの細工でエアーブラシを使う技法もあります。
(4)学校の先生のような教えることもできています。お菓子教室もやっています。
(5)粘土細工は、マジパンづくりで活かされています。マジパンの本は2冊発行し、世界では「マジパンの先生」と呼ばれるくらいになりました。ただし、得意と好き嫌いは別(やり出したら止まらないので熱中してフラフラになって疲れる感じが嫌い)。熱中しすぎるマジパンづくりはあまりやりたくはないそうです。

僕の最大の天敵は、自分が飽きること

僕の最大の天敵は、自分が飽きること

小山氏は自分のために、「自分が飽きないように、面白いレシピの組み立て方をする」と言います。
自分が飽きてしまったらもう終わりだと思っていて、飽きないようにするためには、お菓子の周りにあるデザインから、空間、周りのコトづくりを完備して、お菓子づくりだけにならないように動かれています。

小山 進 氏が普段していること
小山講師は商品開発をメインに作業をしているそうです。毎朝朝礼をして、時にはお菓子教室を行い、それ以外はほぼ商品開発に費やしています。「ケーキの開発は、今、この季節に自分が食べたいと思う感情を優先して作るので簡単だが、チョコレートの開発は難しい。」と小山氏は言います。チョコレートは、バレンタインが終わった3ヶ月間だけ開発をするそうです。レシピとコンセプトを考えます。チョコレートについては、別人格にならないとできないそうで、コックコートもパテシエのコックコートとは異なり、アーティストっぽくなります。ショコラティエはケーキ屋よりも料理人に近く、料理人よりもアーティストっぽくてミュージシャンに近いような感覚だそうです。チョコレートは口の中で溶けるドラマを、一年かけて出会った世界のカカオと掛け合わせて考えます。味わい的に面白い、色的に面白い、歴史的に面白い、伝統の地域の飲み物として面白い、そういった感覚の中から感じたインスピレーションのメモを一年かけて貯めておきます。それが約150種類くらいのアイデアで、その中から3、40種類のチョコレートをつくります。一年間いろんな所に行っては、気づき、興味を持ち、バックボーンを知って、それを伝えられるようにしたいと考えているそうです。「話は面白いほうが良い。行ったことのない人が、行った気になるようなものづくりをしたい。」と思うそうです。チョコレートという領域には、ケーキとは違い、マニアックな素材やテーマを許してくれる力があり、それが、小山氏にとっては飽きずにやっていける材料となるそうです。

大人は立入禁止!小学6年生までしか入れない「未来製作所」

大人は立入禁止!小学6年生までしか入れない「未来製作所」

小山氏は、小学六年生以上は入れない洋菓子店「未来製作所」を、エス・コヤマの敷地内につくられました。大人は見ることができないので、子どもから内容を聞いてもらうようにしています。小山氏は、地域の様々な大人に見守られながら育ちましたが、しかし、現代は大人と子どもとの関係が希薄だと感じています。子どもが何かを感じても、それを披露するキャンパスがないように感じるそうです。そこで、この製作所をつくることにしました。大人は未来製作所には入ることができないので、子どもに頼んで購入してきてもらうことになります。子どもに頼んでお菓子を買ってきてもらったり、会話のやりとりができたりするコミュティの場があってもいいのではと考えました。コンセプトは、「子どもが大人にすごい自慢ができる店」。その為、新製品がいっぱい出てこないといけないし、子どもが自慢できるアイテムを揃えて、入り口で待っている大人たちに自慢話のように話してほしいと考えます。捉える視点は、年齢によっても、感性によっても異なります。天井の仕掛けや、足元の仕掛けなど気づくポイントが違うことも発見してほしいそうです。未来製作所では、子どもに対して必要に応じて注意をします。時には、親御さんからお叱りを受けることもあるそうです。しかし、状況を説明し問題に一緒に対峙していく姿勢をもちます。未来製作所を、親と向き合う場としても大事にしたいと考えるそうです。

私たちが育む感覚

私たちが育む感覚

小山氏は講演の中で「自分で大好きなものは、なんで大好きなのか探る。そんなことばっかり考えていたら、勘は良くなる。」と説明されました。小山氏の訓練法は、アーティストのコンサートで、タイトルやコンセプトをバックの映像や音楽から紐解いていったり、ドラマを観る時、どうしてそれに惹かれるのか考えたりすることだと話されました。そういうことに興味を持ち分析する癖をつけていくと勘が良くなるそうです。つまり、日常の中から「面白いことをキャッチするクセ」をつけるということは、注意深くものを見つめて、分析して受けとめ、次に向かう準備をしていることだと考えます。面白がれるセンスを磨く、想像力を膨らませる、他人に伝える、届ける、見せることを考える、これらに向かうための準備に繋がるということでした。小山氏はその感覚を幼少時代から培い、習慣化されているということがわかりました。

与謝野町長からのメッセージ

与謝野町長からのメッセージ

よさのみらい大学の今年度最終講座において山添藤真町長より挨拶がありました。

講演前に山添町長が小山講師と話をした中では、とりわけ幼少期の思い出、体感というものをとても大切にしておられることを強く感じられたそうです。町長は、「この与謝野町で育つ子ども達に、よりよい提案、そして多様な価値観に触れられる機会を提供し続ける必要がある」と感想を述べました。そして、よさのみらい大学をこの地域における学びの場として発展させていきたいと会を締めくくりました。

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