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【よさのみらい大学講座レポート】シェフ・イン・レジデンス YOSANO

最終更新2023年04月01日(土) 10時00分
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小さいものと小さいものをつなぐ〜Chef in Residence YOSANO〜
講師 フードハブ・プロジェクト支配人 真鍋 太一 氏
料理長 細井 恵子 氏
農業長 白桃 薫 氏
パン製造責任者 笹井 大輔 氏
ニューヨーク在住シェフ デイビット・グールド 氏
日時 2018年8月27日(月)19:00~21:30
2018年8月28日(火)①15:00〜17:00、②18:00〜21:00
2018年9月25日(火)15:00〜18:00
会場 (8月27日、9月25日)産業創出交流センター
(8月28日)かや山の家及び周辺地域
参加者 (8月27日)27名
(8月28日)①23名、②25名
(9月25日)23名

徳島県神山町で、地域の農業と食文化を次の世代につなげる活動を展開している株式会社フードハブ・プロジェクトを迎えて、与謝野町における食の価値や、可能性について考える講座を8月27日・28日・9月25日の連続講座で開催しました。

第一日目のテーマは「インストール」。フードハブ・プロジェクトのみなさんの考え方や活動を聞き、「自分だったらどうするか」「与謝野だったらどうするか」を考えるワークショップを実施しました。

初めに、講師の真鍋さんから受講者に対し、この連続講座をとおしての心得が話されました。「自分の言葉で主体的に話すことが大切。人がどうこう、社会がどうこう、世の中がどうこうは、いくらでも言えるが、そうではなく、『私はこう思う』『私ならこう言う』という意識をもって考えてほしい」。

次に受講者から、参加した動機や話してみたいこと、やってみたいことの自己紹介がありました。受講者には与謝野町や京丹後市、宮津市で、地元の食材を使った料理や加工品を作る者や、土産品販売やレストランでの接客をする者、農業、酒造をする者など食にまつわる様々な人たちが集まりました。

講義の様子

講義の様子

いよいよワークショップがスタート。キーワードを「非日常と日常」とし、真鍋さんが、「ごちそう」と聞いてどんなものを思い浮かべるか質問すると、受講者からは、「いなりずし」「母親の手料理」という声があがりました。「ごちそうというと、非日常の食べ物として特別に意識しても、日常の食べ物は意識をしていない人が多い」という真鍋さん。フードハブでは、「日常を当たり前に美味しくしたいということを大事にしている」といいます。

「地産地食」はフードハブの合言葉として、地域で育てて、地域で食べ支えることを意味しており、手仕事による多様な味とコミュニティが生み出されているそうです。

フードハブでは、素材が地域で採れたものを使う割合「産食率」を毎日測っており、神山町内では年間約54%。徳島県内まで広げると80%から90%になるとのこと。「これがエコシステムとして地域ごとに広まれば」というのが真鍋さんの考えです。調味料含めて全部まかなうのは難しく、時期によってはどうしても採れない野菜もあることから、他府県の食材も使うそうですが、できる限り地元のものを使います。その結果、おのずと独自の味となり、それが「神山的な味」になるとのこと。「しばりを設けることで、逆に、与謝野でも与謝野の味が出る可能性が高くなるでは」と真鍋さんはいいます。

グループディスカッションに入る前にフードハブ・プロジェクトの説明が行われました。フードハブ・プロジェクトでは次の4つの部門があります。

①育てる部門:農業チーム(フードハブの核)
研修生を受け入れて神山に就農させる。新規就農者は容易に土地が借りられないので、フードハブが代わりに農地を借りて、農地を管理。「地産地食」は社内では「社会的農業」と呼んでいる。地域の未来のために農業と景観を守っている。

②つくる部門:加工品開発・製造を。地域の味をつなぐ加工品。地域の資源をみらいにつなぐ地元のパンと食品店を運営。

③食べる部門:地産地食の食堂。(夜は居酒屋)。パン、野菜、加工品の販売。フードハブのメインターゲットである神山で暮らす人に向けた料理を提供する。その為価格は抑えて販売、地元で余ったものを都会向けに販売し、地域への来訪を誘う。

④つなぐ部門:食育のチーム。食育のプロモーションとコミュニティマネージメント。学校や地域団体(生活改善グループ)と日々連携して、農産物や加工品を製造。保育園から幼稚園、小学校、中学校(受入のみ)、高校で授業を実施。種取りから苗たてまで学年を超えて引き継ぎ、学校内で循環させている。

次に、「オール与謝野で地産地食をやってみたらどうなるか」をテーマにグループディスカッションを行いました。

ディスカッションの後は、グループの中から1つのチームが発表。与謝野町で全ての食材を揃えることが可能かという議論の中で、「米や野菜はできても、与謝野には畜産がないので、肉や魚はよそからでないと無理ではないか」「季節によっての安定供給が難しい」という意見が出たそうです。解決策として、「調理・加工する者と農家とが連携をし、提供側がほしがっている食材を農家に作ってもらえるようになれば、オール与謝野が可能になるのではないか」との提案がありました。

「発表では畜産がないと言われていましたが、明日いただく牛肉は与謝野産です」という真鍋さんの発言に、驚きの表情をみせる受講者も。しかも、その生育方法から、質のよい肉として想像されるものだそうです。真鍋さんは「このような牛を一頭買いして、育成を委託するような地域連携ができるようになるとすごくおもしろい」と話されました。

グループディスカッションの様子

グループディスカッションの様子

各グループの発表の後はフードハブ・プロジェクトの商品開発の事例紹介が続きました。

<全粒粉のパンづくり>
講師の白桃さんが知る上でも70年来の在来種の小麦があり、外来の小麦と同じ条件下で育ててみると成長の度合いが1.5倍も違うことがわかりました。この小麦は、味噌や醤油を仕込むため使われていたもので、パン向きとは言い難いものでしたが、全粒粉100%のパン作りに挑戦し、商品化しました。

<カミヤマメイト>
白桃さんの祖父が戦時中米ぬかをクッキーみたいにして食べていたというエピソードを生かして、
米ぬか、小麦をベースにした「カミヤマメイト」という商品も開発。桜の塩漬けやよもぎなど地元の素材をさらに掛け合わせた味の展開も広げがっています。また、地元のおばあちゃんたちと作り続けられるものを残す目的でレシピの開発もしています。

<日本酒づくりの挑戦>
フードハブでは、経験ゼロからお酒の開発をしました。米の精米、麹、酒造と各々の工程で壁にぶつかりながらも、あらゆる協力者に助けられ、40年来途絶えていた地元にお酒を復活させました。その結果、地元の人が大変喜ばれ、次の酒造りに向けて応援金を寄せてくれるようになりました。

<少量多品目の挫折>
食堂でバラエティ豊かな内容で産食率をあげたいと、農作年間200品目を目指しています。しかしフードハブの中だけで作るのには限界を感じるようになり、地域での協力者を得て、分散して多品目を得られるようにしました。これにより、フードハブの中だけで完結することなく、安定した供給と、地域の他の農家の方々との日々のコミュニケーションが充実するようになりました。
以上のような、フードプロジェクトの商品開発の話を聞いて、再びグループディスカッションが行われ、少量多品目で種類を分担するのは良いという感想や、農作物を配達しつつ、集荷してくれるようなシステムがほしいという意見が出ました。
講師の細井さんが東京で働いていた時は、作りたいものに合わせて食材を用意していましたが、神山町では全くそういうことはしないと説明されました。今は、「ここにあるものでつくる」というスタイルに変え、その結果、料理を提供する者の腕が問われます。「制約があるからこそ能力が映え出てくることもある」と真鍋さんはいいます。

最後に、翌日のワークショップに向けて、フードハブ・プロジェクトの話を聞いて、やってみたいことを受講者に書いてもらいました。おばあちゃんのレシピ集冊子作り、与謝野町のいろいろな物を作った朝食、与謝野の食材で畑をまわるキッチンカー、与謝野町の生産者さんと協力したパン作り、与謝野町産の農作物を使用したクラフトブルワリー、有志による定食屋さん「よさの食堂」、皆で持ち寄ってそれを当日皆で考えてメニューをつくる等の意見が出ました。

【2019年8月28日(火)15:00 – 17:00 ワークショップin かや山の家】

かやの家でのワークショップ

かやの家でのワークショップ

二日目のテーマは「アップデート」。新しいものを生み出すのではなく、今まで気づいていなかったものから新たな発見をする、「アップデート」というとらえ方で講座が進みました。

まずは、チェックインと題し、昨日の感想と自己紹介から。色んな方と前向きな意見交換ができた喜びや、フードハブ・プロジェクトの地域のつながりを大事にしている感覚に共感する思いが多く出てきました。

一日目の最後にあった「やってみたい」と思った意見集約の中にあった「よさの食堂」というテーマを軸に、地産地食を考えていきました。「社会的農業」「加工」「パンや食品、お酒など」「食堂(料理)」「食育地域連携」の5つの部門に分かれ、数字を振って、各部門グループから同じ数字の者が集まってチームをつくる「ワールドカフェ」というディスカッションの方法で考えていきました。

テーマは「オール与謝野で取り組む地産地食」。「よさの食堂」での受け継がれた食(過去) 、今の食(現在)、 これからの食(未来)、で考えます。メニューだけでなく、どういうものを出すか、どういう人が提供するか等を話し合いました。

意見出しの様子

意見出しの様子

グループ発表では、年配者が、30~40代の層に料理を伝え、その人たちがいかにアレンジして若者に提供できるかが大事であり、よさの食堂という場所を「伝えていく場」にしたいとの意見や、「40代の娘が、80代のお母さんを連れてくるような食堂」「幼い子どもに食育するためには、その子どものお母さんに対する食育ができる場所が必要」「多世代が関われるような食堂」という意見が出ました。ただ食べる場所だけではなく、世代間がつながれる場所にするべきであるとの感覚が生まれていきました。

あるグループでは、具体的に集まったメンバーの強みを紹介し(魚がさばける、パンが作れる、ビールのホップを作っている、接客で雰囲気づくりができる、収支管理や広報、クレーム対応ができる等)、頼もしいプレゼンで会場を賑わせました。

受講者同士で意見交換しました

受講者同士で意見交換しました

ディスカッションの最後には。講座最終回の9月25日に向け、「どうやってよさの食堂を実現するか」または「全然違うアイデアでも良いので具体的な事業構想を考えてくる」という宿題が受講者に課せられました。

2019年8月28日(火) 18:00 – 21:00 料理体験in 温江の畑

ここで受講者は、会場をかや山の家から少し下りた温江地区の畑へ移動。美味しさを感じ、与謝野的な食の楽しみ方の、これからの味のヒントを探しました。みんなで共に行うことを目的に、普段味わうことのできない畑の中でのディナータイム。料理を担当したのは、神山町に長期滞在し、フードハブ・プロジェクトに参画するニューヨーク出身の腕利きのシェフ、デイビット・グールド氏。与謝野産食材(調味料を含むと67%食材のみだと100%の産食率)で仕上げられた料理に舌鼓を打った受講者たちは、驚きと同時に地元の食の価値や可能性を見つめ直していました。

温江の畑に設けられたディナー

温江の畑に設けられたディナー

畑とは思えない素敵な雰囲気

畑とは思えない素敵な雰囲気

食材は100%与謝野産

食材は100%与謝野産

地元の食材がとてもおしゃれになりました

地元の食材がとてもおしゃれになりました

シェフインレジデンス

シェフインレジデンス

夜になるとライトがまた一段と味わい深い雰囲気です

夜になるとライトがまた一段と味わい深い雰囲気です

2018年9月25日(火)15:00 – 18:00 産業創出交流センター

最終回は、前回までのふりかえりと、どうやったら「よさの食堂」を実現できるか、また全く異なった食のアイデア等が発表されました。そして、起業や事業拡大を支援するために今後活用できる町の支援制度(農商工連携推進事業費補助金)や産業創出交流センター(営業許可施設)の紹介がありました。

発表では、「食をどのように活かして自分なりに実現するか」をテーマとし、イベント形式やワークショップ、体験メニュー、シェアキッチンカーなど、プレイヤー同士の交流も楽しみながら進める構想や、ビールや日本酒など商品を開発するための環境や売り方の構想、現在の自身の職のサービスの展開や運営の展開等、各受講者から思いの込められた発表がありました。また、京都北都信用金庫、京都銀行、与謝野町商工会からも聴講があり、発表者の声を聴いて、最後に応援される気持ちをそれぞれ挨拶されました。

最後に、講師の真鍋さんから「今回のシェフ・イン・レジデンス講座の実現には、畑の中でディナーを提供するという企画に協力してくれた開催地域の人々のサポート、応援の想いのおかげ」と感謝の言葉があり、「今日の発表で終わりではなく、これをきっかけとして、できることから動いていくこと、ここで出来た関係性を続けていくことが一番大事」と締めくくられました。

連続講座をとおして、受講生の間には良き関係性も生まれ、共に事業を起こしたいとの前向きな発言が出ていました。今回のよさのみらい大学は、そのような新たなビジネスへの興味関心を高め、ともに新たなビジネスにチャレンジを志す仲間づくりの場やきっかけづくりの機会となりました。

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