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【よさのみらい大学講座レポート】「遺言。」みらいのためにこれだけは言っておきたかった

最終更新2023年04月01日(土) 10時00分
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「遺言。」みらいのためにこれだけは言っておきたかった
講師 東京大学名誉教授 養老 孟司 氏
日時 2019年2月14日(木)19:00~21:00
会場 知遊館
参加者 183名
講師の養老孟司氏

講師の養老孟司氏

2月14日「人と動物は違います、では何が違うのか?」というお話しで講座は始まりました。チンパンジーと人間の脳は約98%が同じだと言われています。では動物と人間は何か違うのか?動物と人間の違いは、「動物は言葉をしゃべらない」という。「15年一緒にいる我が家の猫もしゃべらない、15年も一緒にいるんだからそろそろしゃべってもいいものだが・・・」と講師は笑いを誘いました。

笑いありのユーモアを交えた講座です

笑いありのユーモアを交えた講座です

しかし、動物には人間の言葉がわかっていて、全ての動物は全体音感を持っているそうです。「絶対音感」それは、「=音の高さがわかる」ということであり、実は、私たち人間全員が生まれた時に絶対音感を持っていたという。音の高さがわかるのが当然だとすると、「なぜ?今、そうなっていないのか?」「なぜ?私には絶対音感がないのか?」という問いを感じる必要があると講師は語りかけます。

猫は絶対音感があり、かつ目で物事を見ているので、全て「違う」ものとして見ているそうです。しかし、人間は言葉を保有しているので、違うものを「同じ」だと認識してしまう。言葉によって「違うべき」ものを「同じ」ものだと認識してしまうということです。

「世界にひとつだけの花」という曲が以前流行りましたが、「世界にふたつ同じものがあるはずがない」と笑いながら語りかけます。同じものは無く、全てが一個一個違うことは当たり前だと。違うものを同じだと思い込んでいるのは人間で、その結果、「人と違う」とわざわざ表現する必要が出てきてしまった。その結果、人は「違う」ということを強調するようになり、風潮ができあがる。世にいわれる「違う」とは、「感覚的」なもので、絶対音感で考えた場合の、音の高さが「同一」と「同じ」とは言えない。そう考えると、言葉を「聞く」と捉えた場合、言葉の「意味」の捉え方も違うはずです。「違い」と「同じ」を理解するための具体的事例として、例えば、TVで「同じ」ものを見ているとして、見ている角度が違うことで別のもの「同じではない」になる。また、夫婦が会話をしているとして、旦那さんは奥さんの顔を見ていて、奥さんは旦那さんの顔を見ている。一緒にいたとしても、同じ空間であってもお互いが見ている景色は違う。夫婦だから同じ環境、景色を捉えているわけではなく。「人は、他人と同じものを見ることはできない」ということになる。平安時代から同じだと言われている「天橋立」も、「同じ天橋立」はなく、時や人により変わる。そんな当たり前のことを人は平気で「同じ」だと思っている。

チンパンジーの研究では、数字を大きい数から選ぶことができます。ただし人とは覚え方が違う。チンパンジーはフラットな視覚(図像、絵として)で覚えています。根本的に「数字」として見ていない。違いを感じることができるものとしては「臭い」があるが、「臭い」とはそもそも何なのか?そこで「臭い=今までと違う」という意味が出来上がる。リンゴを例にしてみると、切られたリンゴ、木に実っているリンゴ、赤でも青でもリンゴと人間的な感覚では表現できる。英語で表現すると「The apple」(それらのリンゴ)と表現されることもある。まさに感覚で捉えているが、同じリンゴなどない。全てが「an apple」(ひとつのリンゴ)であり、まさに言葉で同じものだと認識している。

講師は同じだと認識しがちな私たちに「皆さんの『中に実際にあるもの』は何ですか?」と本質を問います。講座では終始、講師の人生の中で経験から生まれた問いや違和感、そして見解が繰り返し紹介されました。

「現実」と「抽象」の違いは、「自分の行動に影響するのが現実」、「影響しないことが抽象」であり、人は概念と言葉を作り、その結果「音」を無視するようになり、やがて、数字が生まれ「同じ」だと思うことが多くなったといいます。3-Aや、2x=3、3Xなど数学の中には数字と文字が一緒になっている。そもそも数字と文字を同じ感覚で使用していいのか?意識が同じだと認識していく。大人と子どもを比較すると、子どもの方が「違い」に気づくといわれます。しかし、大人は昨日と今日が同じ、毎日が同じ日々とか、決めつけることが多い。大人は「同じこと」を自ら「見つける」ているといいます。文明社会では、A=B、B=Aなど「交換の法則」があるが、交換=イコール(同じ)であり、同等のものが交換できる「等価交換」が成り立ち、それが「経済」が成立した理由であるといいます。

サルの仲間だけが色がわかり、それは顔色を見るためで、動物が食べられるものを認識する(熟れている実かどうかなど)ことではなく、社会生活に必要だからであるそうです。人とチンパンジーは98%の遺伝子が同じで、人間の子どもと0歳~6歳まで育てた実際の研究がある。3歳まではチンパンジーの能力の方が高く、4歳、5歳あたりから人間の能力が高くなったそうです。別の実験では、5歳あたりから「人が知らないコトを自分が知っている」ということを自己認識することができ、その時点で能力の差や、大人と自分を同等だと思うような結果が出たといいます。これは、人は自分と同等であるという認識を「子どものころから認識できる」ということでもあります。

壇上から受講者へ問いかける講師

壇上から受講者へ問いかける講師

私たちの世界は、これらのある種の成果として「言葉」が生まれ、「経済」が生まれ、その結果として「政治」ができたと講師は語ります。

「〇〇年前から変わらない=同じ」と認識することがあっても、意識は時間の中で変化するため、全てが変わらず止まっているものは「データ」であり、変わらないというものはない。例えば、変わらないのであれば、生まれる前の細胞だった時(まだ0.2mmの大きさだった時)に、いったい何を考えていたのか、身体が成長し、40キロ、60キロの身体の重みはどこから来たのか。細胞は7年で全て生まれ変わるとされ、物質的には同じではなくなり、7年前の自分とも全く違うことになる。

講師は余談として、100兆の細菌を持っている我々「人間」が、常に「除菌グッズ」を使っているような不思議なことは、「現実」と「認識」について、まさに企業や国に踊らされている事象の一例と笑いを誘いました。

感覚的に、なんとなく「同じ」、「違う」と思っていることについて。多様性とはそもそも当たり前のことであって、違うものの集まりであるということを。

終始、講師は受講生に問いかけ、「たまには本気で考えてみてもいいのでは?」と講義は終了しました。

講義後の質問コーナーでは、受講生より積極的に個人の感想や質問が集まりました。講師は最後まで熱弁で応じ、最後まで盛り上がった講座となりました。参加した受講生からは「なかなか聞けない話だった」、「もともと養老孟子さんのファンだった、生で話が聞けて嬉しかった」、「友人、家族誘ってみんなで参加しました」、「まるでTVを見ているような迫力のある講座だった」、「よさのみらい大学凄い」等の声もあがり大盛況で終了しました。

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