講師 | 日本アドベンチャーツーリズム協議会 理事 山下 真輝 氏 |
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日時 | 基礎編(オンライン) 9月24日(金)19:00~21:00 応用編①(ワークショップ)10月15日(金)19:00~21:00 応用編②(ワークショップ)11月19日(金)19:00~21:00 |
会場 | 与謝野町産業創出交流センター |
参加者 | 19名 |

「アドベンチャーツーリズム」とは
<基礎編>オンライン開催
世界で注目されるアドベンチャーツーリズム
アドベンチャーツーリズム世界大会が2021年9月20日~24日に日本でオンライン開催されました。テーマは「kyosei 自然と共に生きている人々」。
▼北海道が作成したプロモーション動画を視聴
まさに今、日本は拡大するアドベンチャーツーリズム市場から注目されてきています。アドベンチャーツーリズムの市場は2026年には約173兆円と予測されていて世界的にツーリズムをけん引していくものだと考えられています。アフターコロナ禍では少人数の自然の中への旅行がメインとなっていくそうです。
アドベンチャーツーリズムとは
エコツーリズムやアウトドア、スポーツなども含まれた旅です。
アドベンチャーツーリズムとして求められる3要素は
⑴自然とのふれあい
⑵フィジカルなアクティビティ
⑶文化交流
であり、自然とアクティビティと文化などの活動の相互作用が求められます。アクティビティが自然や文化を体感するツールと考えられています。旅行会社だけが儲かるだけではなく、三方よしではなく、四方よしとするために地域事業者と共に作ることが大事でありサスティナビリティであると考えられています。環境・社会・経済を重視するアドベンチャーツーリズム自体がサスティナブルツーリズムです。その為アドベンチャーツーリズムは物見遊山の観光と違い、少人数でしっかりとしたストーリーとそれをガイドする専門人材もつくので単価は高単価になります。アドベンチャーツーリズムのアクティビティについてもソフトなものからハード、そして専門的なものまで様々なものが存在します。アクティビティの強度も様々であり、スケールの大きなハードアドベンチャーが海外では求められることもあるそうです。
<例>丹後半島をカヤックでめぐるなど・・・
アドベンチャーツーリズムでは、いままでにないユニークな体験・自己変革・健康であること・挑戦・ローインパクトという5つの体験価値を手に入れることができるように設定していく必要があります。
ターゲットは旅行を通じて自分自身の自己変革や学びを求めている傾向が強いそうです。そういった価値観は、次世代であるZ世代に近い価値観でもあります。こういったターゲットは旅行代金にお金をかけることができるそうです。旅館のスペックではなく、物語のスペックにお金を支払うイメージです。富裕層のセグメンテーションとしては、従来型のラグジュアリーではなくモダンラグジュアリーとされています。知識を高めることを目的とし、交流、コミュニケーション能力が高い人とされています。
他国の事例
イタリアトスカーナ地方でも世界大会が行われ、車ではなく歩きでかなり長い巡礼道を6日間めぐりながら旅をするようなウォーキングツアーが実施されました。ツアーでは歩きながら街道沿いの地域の人や文化、歴史と触れながらめぐります。「トスカーナ人の生きざまから自分を取り戻す」というテーマが設定されました。ATの運営にはオペレーターやガイドの人材が重要です。
世界ではトレイルツアーが注目されています。丹後エリアでもトレイコースで作っていくことも良いとのこと。日本では熊野古道がトレイルツアーで存在しています。
アドベンチャーツーリズムの作り方
地域ストーリーの作り方はブラタモリと一緒です。地理的特徴(なぜこの場所)→歴史→地域文化→アクティビティに繋げていきます。だからこそ、そこでやる意義が出来てくると考えられます。沖縄県金武町でも自然環境→文化環境→野鳥のバードウォッチングを組み立てているそうです。更に、記憶に残る体験にするために、認知→興味喚起→受動的体験→能動的体験の流れを設定。知る体験→見る体験→関わり合う体験の流れで提供していく必要があります。その為にも、丹後地域がどのような地域なのかを整理しなおして、どのようなストーリーで展開していくのか考える必要があります。
丹後エリアのアドベンチャーツーリズムとの親和性
⑴多様で豊かな自然環境
⑵自然を生かした豊富なアクティビティ
⑶自然と歴史が育んだ地域文化
⑷豊かな食文化
⑸高い住民意識
<応用編②>ワークショップ
アドベンチャーツーリズムの可能性
●ATWS2018トスカーナの際のアドベンチャーツーリズムの動画視聴
日本は地域ごとの気候も含め多様性が多く注目を集めています。別にアドベンチャーツーリズムという言葉を使う必要はなく、少人数でガイドが付き、地域の自然文化などを伝えることができるラグジュアリートラベルのことを言います。豊かさの価値観は変わってきているので、ラグジュアリー=高級ではありません。高級ホテルで泊まっているターゲットでも農家民泊に感動することがあります。金沢の3000円の元お坊さんが経営する「ポンギー」がラグジュアリー層にも指示されているように、もてなしの質が変わってきています。交流し、共に語りあえるかどうかで満足するかどうかを判断している場合もあります。京都市内は作られ過ぎたテーマパークと表現されることもあるそうです。そういったターゲットに対し提供するのがアドベンチャーツーリズムです。コロナ後に大型団体はなくなっていくので、小グループでのサービスが重要になっていきます。
アドベンチャーツーリズムのターゲットとは
アドベンチャーツーリズムにとって重要な価値である、ユニークな体験・自己変革・健康であること・挑戦・ローインパクトという5つの体験価値と、その旅行を通して地域へ貢献できているか(エシカルツーリズム)が重視されています。ツアーの中でゴミ拾いに参加するなども喜ばれます。アクティビティは地域の自然や文化、社会を感じる手段です。ハードなアクティビティだけでなく、文化体験も喜ばれます。
アドベンチャーツーリズムの提供価値のヒント
ユニークな体験:世界から見て何がユニークか?欧米から見たよそ者視点で考える必要があります。
自己変革:旅行自体を通じて人生観が変わることにお金を払いたい。日本人の生きざまや宗教観などをガイドが話すことができるか?神仏、スピリチュアルを活用する。
健康であること:ツアーの中でリフレッシュ、健康的な過ごし方を演出すること。食事の内容を健康的な内容にする。日本食も健康志向は高い。レシピなど自国へスキルを持ち帰ることができると良い。
挑戦:見たことない、やってことがないことをやってもらう。ツアー後半で少し頑張るようなチャレンジ要素を入れると良い。
ローインパクト:偽善的ではあるがサスティナブルな活動がライフスタイルになっている。プラスティックフリーなどガイドは気を付けておく。リユースできるものを活用する。自然への配慮や地域のコミュニティへの配慮を考えていく。地域のため、自然環境のために行う活動をセットする。
以上のような要素が整備されているプログラムやエリアを世界の旅行会社は探しています。
海外の事例
●アイスランドの旅行会社の様子を動画視聴
まず、アイスランドがどのようにできているかを説明してプログラムが始まります。その場その場でアクティビティガイドが登場して、旅全体で物語を感じることができます。海外では高額で提供されているそうです。日本は滞在プログラムが単発であったり、施設に紐づいていたりするので、海外のようなツアー形式になっているものは少ない状況です。
●カナダの事例を動画視聴
3日間のプログラムでアドベンチャートラベルの要素を体感できると3泊4日で14万円は高くなく、安く感じているそうです。日本側で作る場合は、移動する手段をアクティビティとして活用できていないことも多い状況です。海外だと自転車などでの移動も活用されます。時間管理や効率性を優先するよりストーリーをより濃く体感できることが優先です。その為にも、どんなテーマなのか物語なのかをきちんと設定しておくことが重要です。アクティビティはテーマを補完する役割であり、アクティビティがメインではありません。全てに意味をきちんと持たせることが重要です。
<ワークショップ>
丹後エリアにアドベンチャーツーリズムに活用できる資源はどのようなものがあるのか意見交換を行いました。
<応用編③>ワークショップ
海の京都でもアドベンチャーツーリズムの開発が実施されています。また、山陰海岸ジオパークの方でもアドベンチャーツーリズムの講演をJATOで行われました。国立公園でも保全と活用という意味でアドベンチャーツーリズムが注目されています。かつては表日本である丹後エリアは日本の文化の入り口であり可能性が高いと考えられます。
アドベンチャーツーリズムの商品造成について(振り返り含む)
海外のアドベンチャートラベルエージェントは意識高くアドベンチャーツーリズムのサスティナビリティに理解し実現できているかが問われます。プログラムについては、環境、多様性、異文化交流を大切にしつつ、手段として五感を使ったアクティビティを組み込んでいくことが必要です。意識の高い参加者は、今までのような物見遊山な観光スポットを巡るような一般的な体験ではなく、エージェント側がきちんと本質を理解して伝えることを求められています。日本ではソフトアドベンチャー×文化的体験を組み合わせたものが求められています。アクティビティの強度レベルはソフトなものからハードなものまであるものの、それを組み合わせて提供していく必要があります。(ハードなだけではなく緩急を作る)。自然文化を通して自分の人生を豊かにしていく旅づくりが求められているということです。
Gアドベンチャーの例(世界的に展開している旅行会社)
企画性の高い高額のプログラムを提供しています。アドベンチャーツーリズムではなく、コミュニティツーリズムとも表現しています。サスティナビリティを重要視しているようです。また、主に大切にしていることは次の3つでした。
⑴小規模グループ⑵地元に根付いているガイド⑶ATの本質、理念を追求していること。
そして、サービスは小規模人数:15名以下、一人でも参加できること。CEO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)サービスを提供する人がローカルのオペレーションチームであること。24時間地域の人が助けることができること。参加者の人生を変えるようなことができる人であること。などが求められています。そして、 宿泊施設も理念や物語に沿っているところの設定が可能です。その他にも、プログラムの催行が直接地域の有意義な収益になること。旅行会社だけが儲かるわけではなく、地元地域が潤い持続可能になることなどが求められます。環境問題にも意識高く、アクティビティの自然に対する影響も最小にすることを当たり前基準としているようです。以上に加え、旅の工程全体の満足度もしっかりと演出する必要もあります。ハードなアクティビティの後は休息も必要であり、そのバランスをうまく設計する必要があります。Gアドベンチャーではまだ日本のことを認知しておらず、今後は日本市場の可能性が高いと考えられています。
ATツアーの評価方法(アセスメント)
アドベンチャーツーリズムが重要視している5つの体験価値をきちんと提供できているかどうかを判断されます。ウェルネスについてはデジタルデトックスなども該当するそうです。チャレンジ要素では日本の地域の文化体験などでも良いとのこと。環境については、環境保全に関するツールや高性能のギアを活用することも良いそうです。また、ガイドに対する評価も高まっています。安全管理を行いつつ、地域コミュニティについて理解し、環境や地域経済を守っていくことを求められます。ダメなツアーは物語がなく、ガイドの質が低く、現地のオペレーションがなっていないと考えられています。アクティビティをただ詰め込むだけではいけません。
高付加価値のヒント
テーマ設定が重要です。何を体感してもらうのかを検討しつつ、それをどのような流れにしていくのかストーリーを組み立てていく必要があります。アクティビティや体験がメインではなく。テーマやストーリーを体感するための補完できるツールでしかありません。なぜここでこれをするべきなのか?が明確であることが重要です。世界遺産が素晴らしいわけでなく、その地域独自の価値をきちんと伝えることができる物語になっているかどうかが重要です。そこの体験に意味をつけていくことも重要だと考えられます。その体験の意義と理由を説明できるか、テーマとコンセプトを伝えることができるかを検討する必要があります。更には、国内と海外の他の地域との差別化も合わせて検討していく必要があります。
<ワークショップ>
丹後でどのような滞在プログラムが可能かブレスト、意見交換を行いました。