○美しく豊かな阿蘇海をつくり未来へつなぐ条例

平成28年3月10日

条例第3号

阿蘇海は、日本三景天橋立の内海であり、観光や漁業など、古くから人々の生活や営みと密接に関わりながら、日本を代表する美しい景観を形成し、限りない恩恵をもたらしてきました。

しかしながら、高度経済成長期以降、工業生産の増加、化学肥料への転換、森林の手入れ不足、そして人々のライフスタイルの変化を要因とする富栄養化の進行や不法投棄などにより、阿蘇海の水質や景観が悪化するとともに、生態系が損なわれてきました。

こうしたことから、阿蘇海の環境改善について、総合的な取組を進めるため、地域住民、関係団体及び行政が、平成19年5月に「阿蘇海環境づくり協働会議」を設置し、清掃活動や環境学習、啓発活動等に取り組み、平成27年3月に、阿蘇海流域の将来あるべき姿や目標、取組の基本方針等を示した「阿蘇海流域ビジョン」を策定しました。

私たちは、このビジョンで2030年までに目指すべき環境として掲げた「内海:外海と同じくらいきれいで豊饒な海」「上流:豊かな自然の維持と人の営みの共生」「暮らし:2020年までに不法投棄ごみゼロ」を共有し、阿蘇海がもたらす恵みや景観の活用を通じて環境保全意識を高め、一人一人が環境にやさしい取組を実践して、その実現を目指していかなければなりません。

美しく豊かな阿蘇海を取り戻し、次の世代に継承していくため、住民、事業者、行政等が一体となって最大限努力していくことを決意して、この条例を制定します。

(目的)

第1条 この条例は、町民等、地域活動団体、事業者及び行政が一体となって、阿蘇海水域及びその周辺の環境の保全に取り組み、美しく豊かな阿蘇海を実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 阿蘇海 小天橋及び大天橋より内海の水域をいう。

(2) 阿蘇海水域 阿蘇海及びこれに流入する公共用水域をいう。

(3) 町民等 町内に居住し、勤務し、若しくは在学する者又は町内に滞在し、若しくは町内を通過する者をいう。

(4) 地域活動団体 自治会及び町内で活動するボランティア団体等をいう。

(5) 事業者 町内で事業活動を行う法人その他の団体及び個人をいう。

(基本理念)

第3条 美しく豊かな阿蘇海の実現に向けた取組は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

(1) 先人から受け継がれてきた阿蘇海の歴史的及び文化的な価値を次世代に継承すること。

(2) 阿蘇海水域及びその周辺の自然的及び社会的な環境と調和し、地域の個性を活かすこと。

(3) 一人一人が阿蘇海とのつながりを意識し、町民等、地域活動団体、事業者及び行政と協働すること。

(町の責務)

第4条 町は、阿蘇海水域及びその周辺の環境の保全を図るため、京都府及び宮津市と協調し、必要な施策を実施するものとする。

(町民等、地域活動団体及び事業者の責務)

第5条 町民等、地域活動団体及び事業者は、阿蘇海水域及びその周辺の環境の保全に自ら努めるとともに、町が実施する施策に協力するものとする。

2 事業者は、前項に定めるもののほか、自らの事業活動に伴う排水による阿蘇海水域の汚濁の負荷の低減に努めるものとする。

(管理者の責務)

第6条 阿蘇海水域を管理する者は、その管理する施設の良好な環境の保全に努めるとともに、町が実施する施策に協力するものとする。

(阿蘇海環境づくり協働会議との連携)

第7条 町は、阿蘇海環境づくり協働会議と積極的に連携し、及び協働するものとする。

(生活排水の処理)

第8条 阿蘇海水域に生活排水を排出する者は、廃食用油、食物残さ等の処理及び洗剤等の使用を適正に行うよう努めなければならない。

2 公共下水道及び農業集落排水処理施設の処理区域内の者は、町が定める排水設備を設置しなければならない。

3 町が定める浄化槽の普及を促進する区域内の者は、浄化槽の積極的な利用に努めなければならない。

(農業排水の処理)

第9条 阿蘇海水域の周辺において肥料を使用する者は、阿蘇海水域への窒素又はりんを含む物質の流出を抑制するため、肥料の使用及び排水の管理を適正に行うよう努めなければならない。

2 農業に従事する者は、有機質肥料の積極的な利用を促進し、環境に配慮した農業に努めるものとする。

(森林の保全)

第10条 阿蘇海水域の周辺において森林を所有し、又は管理する者は、阿蘇海水域への土砂等の流出を防止するため、森林の保水機能を高める等、森林資源の適切な利用及び森林の保全に努めなければならない。

(生態系の保全)

第11条 阿蘇海水域及びその周辺に生息するホタル、サケ、アユ、コハクチョウ等の希少な生物は、阿蘇海の美しく豊かな自然環境の象徴であって、何人も、これらをはじめとした在来生物の生息環境の保全に努めなければならない。

2 何人も、阿蘇海水域の生態系を破壊するおそれがある特定外来生物(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号)第2条第1項に規定する特定外来生物をいう。)を、阿蘇海水域及びその周辺で放ち、植え、又はまいてはならない。

(投棄の禁止等)

第12条 何人も、みだりに阿蘇海水域及びその周辺に廃棄物を捨ててはならない。

2 阿蘇海水域の周辺の土地、建物又は工作物の所有者、占有者又は管理者は、当該土地、建物又は工作物の清潔が保たれるよう努めなければならない。

(町民等、地域活動団体及び事業者の活動の促進)

第13条 町は、町民等、地域活動団体及び事業者が行う阿蘇海水域及びその周辺の環境の保全に関する自主的かつ自立的な活動を促進するため、環境学習、普及啓発その他必要な事業を実施するものとする。

(阿蘇海の日)

第14条 阿蘇海水域の歴史と文化に関する理解を深める取組、阿蘇海水域の環境保全意識を醸成する取組及び阿蘇海水域に親しみ、その魅力を全国に発信する取組を促進するため、阿蘇海の日を設ける。

2 阿蘇海の日は、毎年、町長が別に定める。

(未然防止等)

第15条 町は、第11条第2項又は第12条第1項の規定に違反する行為の未然防止及び早期発見のため、関係行政機関と連携するものとする。

2 町は、前項の違反行為に対して、阿蘇海水域及びその周辺の環境保全に重大な支障があると認めるときは、警察その他の関係行政機関に対し、関係法令等を適用するよう積極的に要請するものとする。

(見直し手続)

第16条 町長は、阿蘇海水域及びその周辺の環境保全に関する課題について、阿蘇海環境づくり協働会議における意見の内容等を勘案して、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講じるものとする。

(委任)

第17条 この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。

この条例は、平成28年4月1日から施行する。

美しく豊かな阿蘇海をつくり未来へつなぐ条例

平成28年3月10日 条例第3号

(平成28年4月1日施行)